バブル崩壊から30年

私が生まれたのは1970年代前半である。
当時は「明日は今日よりも豊かになる」が口癖のようになっていて、
右肩上がりの時代であった。
正社員として仕事につき、長く務めるほど可処分所得が上がっていくのが当たり前であった。

1995年、バブルが崩壊し、「就職氷河期」に突入した。
正社員の求人が極端に少なくなり、代わりに「パート・アルバイト」の求人が激増した。
当時の私は、3~5年もすれば景気が持ち直してくれるだろうと高を括っていたものである。

だが、予想に反し、ずっと下り坂の状態が続いた。
そして、2020年4月~2023年4月にかけてコロナ渦が猛威を振るった。
このあと落ち着いてくるのかと思いきや、今度は円安に悩まされることになった。

現在、多くの業種が厳しい状況に置かれているが、
その中でも際立つのが「飲食・小売・宿泊」である。

ネットニュースなどで「飲食業界の苦境」に関することが頻繁に取り上げられているが、
この問題について自分なりに考えてみた。

飲食店の「パート・アルバイト」の求人を見てみると、そのほとんどが最低賃金すれすれの時給であることが多い。
みなさんは「なぜ、この時給なのか?」について考えたことがあるだろうか?
「経営が苦しいから・・・」その通りである。
飲食業界では、店ごとの時給に格差があまりなく、「金太郎あめ」に近い。
この理由を説明できる人はどのくらいいるだろうか?

ネットではほとんど語られていないことだが、重要なことが一つある。
それは「製造業とは異なり、大量生産ができず、取引可能な数量が圧倒的に少ない」ということである。
製造業であれば、単価を安く設定し、数千~数十万の数量で客先と取引することも珍しくない。
それに対し、飲食業界は一般消費者から代金を貰う以外に収入を得る手段がない。
このため、大きく稼ぐことが難しい。

経営者は「パート・アルバイト」を雇用の調整弁として扱い、人件費を抑制するためにシフトを一方的に削るというのがよく起こる。
こうなってくると、スタッフの給与が伸びないばかりか、経営者がスタッフに対して忠誠心を求めることが難しくなり、労使の関係も変わっていく。
(労働者側が事業者を都合よく利用する事態が頻発するようになり、信頼関係を築けなくなる)
人手不足を補うため、ルールを緩めざるを得なくなる店も出てくるようになる。
価格競争が激しいのをいいことに、悪質な客に目をつけられるようになる・・・
解決方法は・・・値上げ以外にないのではないか?と私は思う。
「無料のサービス」と「有料のサービス」を設けるのも一つの方法である。

とあるファミリーレストランの話。

そこでは、タッチパネルで注文する形式を採用している。
「タッチパネルなら、飲食代金がリアルタイムで表示され、客が飲食代を容易に調整できる」というイメージを持っている人が多いかと思う。
しかし、その店では飲食代が画面に表示されず、客が自分で計算しなければならない。
しかもテーブルの上にはレシートではなく番号が書かれた札が置かれ、食事が終わった客がそれをレジに持って行って代金を支払う。
清算時まで代金を確認することができず、消費金額が膨らみやすい仕組みになっているのである。
「飲食代を隠すとは、けしからん!」と言いたくなる人もいるだろう。
(そのくらい経営が厳しいのだろう。値上げしても良いような気もするが)

しかし、ここで一つ考えてほしい。

タッチパネルを採用していない飲食店では、
メニューを見たうえで、口頭で欲しい品を注文する形式が多い。
そのような店では先述したファミレスと同様、客が飲食代を自分で計算しなければならない。

何と比較して言っているのか?である。

消費者は飲食業界の置かれた現状を理解したうえで店舗を利用するべきである。

2024年、政府は「最低賃金1500円」を目指す方針を掲げた。
実現するのはかなり厳しいと思うが、政府には頑張ってほしい。
さもなくば、貧困が蔓延し、強盗事件が頻発するなど、治安にも悪影響を与えかねない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました